塩谷 優子(しおたに ゆうこ)さん/東京都出身

京都大学工学部工業化学科(卒業年度:2001年度)
京都大学大学院工学研究科 修士課程(2003年度修了)
京都大学大学院工学研究科 博士後期課程(2006年度修了)
在学時の所属研究室:高分子化学専攻 重合化学分野 中條研究室(現田中研究室)
現在:ダイキン工業株式会社 テクノロジー・イノベーションセンター

自分で合成した化合物が
商品化される醍醐味

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どうして京大工業化学科へ?所属研究室選びの決め手は?

教科書の化学構造式から自分で手を動かすことで、目で見て触れる‘モノ’が出来上がるという面白さを、高校の化学の授業で感じていました。研究室選びでは、中條教授が掲げる「見て触って楽しむ高分子」に非常に惹かれました。また、研究室にドクターの方や留学生も多く多様で活気にあふれていたこと、好きなことを自由に研究できる環境であること、何より教授の力強い話に引き込まれ所属研究室を決めました。

学部、大学院での研究

炭素原子(C)ではなく、リン原子(P)をキラル中心としたポリマーの合成とその特性について、またクラウンエーテルの酸素原子(O)をリン原子(P)に置き換えた合成とその物性評価を行っていました。当時、リン原子をキラル中心で有するポリマーはほとんどなく、またリン原子を有するクラウンエーテル(ホスファクラウン)は例がなかったため、世界初の合成例となりました。

京大工業化学科の魅力

紙面上での構造式から、実際にそれを自分で作り出しその特性を評価するという一連の流れを行えたこと、世界的にも有名な先生が大勢いらっしゃる環境で最先端の研究に携われたことはとても大きな財産です。また、京都という歴史のある神社やお寺が日常に溶け込んだ土地で学び、自分の好きなことを探し夢中で取り組めたことはかけがえのない時間でした。

京大工業化学科の思い出

先生方や先輩がとても気さくで学生実験の時も面倒見がよかったです。自由でメリハリのきいた研究室が多く、ソフトボール大会など遊ぶ時も研究も、どちらも全力で取り組み楽しむ風土がありました。

就職の決め手

「社員の成長の総和が会社の成長」ととらえる社風や、やりたいと手を挙げたら任せてもらえる風土に魅力を感じました。フッ素業界という特殊な分野において、原料のフッ酸から重合したポリマーまで自社で幅広く扱っていることも魅力的でした。何より、社員の皆さんが楽しそうに働いていたことが印象的でした。

お仕事

ダイキンはフッ素化学メーカーで世界トップクラスです。フッ素の特性(例えば、水や油をはじく、滑りやすい、など)を活かした表面機能材の開発に取り組んでいます。

フッ素は目で見て触って、はっきり違いが分かる特性を有しています。自分で合成した化合物が思い通りの特性を示したり、逆に予想外の特性を示してその奥にある原理原則を明らかにしたりすることは、純粋に面白いです。また、これらの原理原則が積み重なって技術となり、商品という形になって世の中に出ていくことに、企業ならではの醍醐味を感じます。学会や講演会での一見直接は結び付かないような現象も、その本質を汲み取って商品化の技術の一つへと翻訳すること、目の前の実験の結果が示す小さなメッセージ(真理)を見逃さないこと、を意識して、常に幅広くアンテナを張り勉強しながらこれからも取り組んでいきたいと思っています。

仕事に役立っている工業化学科での学び

机上での構造式から実際に作って評価するという一連の流れを全て行うことができたこと、幅広く学びつつ、かつ一つのことを深く研究するという姿勢は今につながっています。

後輩へのメッセージ

京都という歴史が日常に溶け込んだ土地で、世界トップの先生方と研究に打ち込めるのはとても貴重な時間です。世界初の研究をする面白さをぜひ味わってください。

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修士の修了式にて研究室の同期と。
左から (1)現:金沢大 和田助教、(2)現:東工大 稲木准教授、(3)本人、(4)同級生:堀さん


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