沿革
理工化学科は京都大学における最も歴史の古い学科の一つで、大学開校の翌年の明治31年(1898)に理工科大学の1学科として開設されました。それ以後、我が国の産業の発展と質的な躍進に対応して、石油化学科、化学工学科、高分子化学科、合成化学科、および分子工学専攻が設立されました。これら京都大学工学部化学系の教室は、基礎理論から応用,製造にいたる化学に関連するすべての分野を網羅し、基礎を重視すると同時に工業的応用をも目指す独特の学風を形成してきました。そして、卒業生は、学術領域における福井謙一博士、野依良治博士、吉野彰博士のノーベル化学賞受賞はもとより、学術・産業の広い領域で活躍し、今日の日本の科学技術の礎を築いてきました。しかし、21世紀を迎え、化学に対する要請はますます高度化かつ多様化してきています。このような変化に対応するために、従来の学科にとらわれない幅広い教育とより高度な研究が必要になってきました。これを実現するために、平成5年、化学系学科の再編が行われ、新しい内容の「工業化学科」として統合されました。工業化学科は、基礎化学と工学を連携させて社会の課題に向き合うという学科の理念を継承するとともに、多様化した先端化学領域でのさらなる研究の発展を目指し、2024年(令和6年)より理工化学科に名称を変更しました。理工化学科は、伝統ある名称を引き継ぎ、新生した総合化学科であり、狭い専門にとらわれず基礎化学と基礎工学を重視する教育を実施し、伝統ある学風をますます発展させています。一方、大学院も平成5年に改組され、材料化学専攻、物質エネルギー化学専攻、分子工学専攻、高分子化学専攻、合成・生物化学専攻、化学工学専攻の6専攻に再編成されました。これら専攻のなかには旧専攻の名称を踏襲したものもありますが、その編成は一新されています。各専攻とも、先端的萌芽的研究促進のための大学院専任講座が設けられており、また学問の高度化と学際領域の研究促進のために従来の講座が複数集まり、基幹講座としての大講座を構成しています。さらに学内の化学研究所、医生物学研究所、エネルギー理工学研究所、および複合原子力科学研究所の研究部門が研究協力講座として参加しており、化学系全専攻が包含する分野は化学に関するほとんど全てにわたっています。