藤永 匠平(ふじなが しょうへい)さん/兵庫県出身

京都大学工学部工業化学科(2017年度卒業)
京都大学大学院工学研究科 修士課程(2019年度修了)
在学時の所属研究室:合成・生物化学専攻 生物化学工学分野 跡見研究室
現在:サンスター株式会社 研究開発統括部 オーラルケアイノベーション研究開発部

化学と生物の視点を持つ
ハイブリッドな研究員に

画像分析など様々な機器を活用しながら機能性の評価を進めています。
画像分析など様々な機器を活用しながら機能性の評価を進めています。

どうして京大工業化学科へ?

オープンキャンパスでキャンパスの雰囲気に一目ぼれし、絶対にここで学びたいと一念発起し京都大学を目指しました。京大には沢山の学部・学科がありますが、工学部は本当に幅広い研究分野から研究室を選択できる学部であり、その中でも実社会に貢献する知識を身につけた研究者になりたくて、工業化学科を選択しました。

所属研究室選びの決め手は?

小さいころから映画の「ジュラシック・パーク」シリーズが好きで、映画に出てくる遺伝子工学研究者に漠然とした憧れがありました。大学入学時は興味が変わることもあるかと思い、研究分野が幅広い工業化学科を選択しましたが、勉強していく中でも遺伝子への興味は変わらなかったので、遺伝子工学を学ぶことができる跡見晴幸先生の下で研究することを選択しました。

学部、大学院での研究

超高温環境に生息するユニークな微生物「超好熱性アーキア」を研究していました。微生物の存在が知られてから数百年もの歴史が経ちますが、微生物の遺伝子が持つ機能についてはまだ半数程度しか分かっていません。その要因は幾つかありますが、ラボでの培養が実際の生育環境と大きく異なることが一因です。私はそこに着目し、今まで使われていなかった微生物機能を呼び覚ます研究を行っていました。
その結果、今まで使われていなかった沢山の微生物の遺伝子データを目の当たりにしたときは、本当に興奮したのを覚えています。まだ世界の誰もやっていないような、挑戦的な研究を行うことが出来るのは大学研究の醍醐味だと思います。

京大工業化学科の魅力

ノーベル賞受賞者を輩出している由緒ある学部であることは勿論ですが、有機化学・無機化学・物理化学にとどまらず、生物化学や高分子化学、化学工学などとにかく幅広い分野の知識を網羅的に学ぶことが出来るのが、京大工業化学科の一番の魅力だと思います。
生物の研究をしていた立場から言えば、生物の起こす現象は大学の化学で説明できるものが多いです。そのため、生物を研究する上で化学の基礎を理解しているのとしないのとでは雲泥の差だと思います。化学という学問を理解した生物研究者を目指せる点も、京大工業化学科の大きな魅力だと思います。

京大工業化学科の思い出は?

学部生時代に行った学生実験と院生時代に毎年2回あったソフトボール大会です。学生実験では化学全般に関して幅広く実験を行いました。学んだ知識を実践で確かめることで化学科に入った醍醐味を感じることができ、とても楽しかった記憶があります
ソフトボール大会に関してもかなり真剣に取り組む研究室だったので、実験の待ち時間が出来れば必ずと言っていいほど皆でソフトボールの練習をしていました。研究室にいるとなかなか体を動かす機会もなかったので、本当に楽しい思い出しかありません。

就職の決め手

身近な製品に関わるメーカーで働きたいと考え、私の大好きな関西で、GUMやOra2といった身近な製品を出しているサンスターに入社しました。
企業研究をしていく中で、健康に関する研究に向き合う真摯な企業姿勢や、面接前の懇談会でお話しした研究部や人事部の方々の穏和な人柄が、入社の大きな決め手となりました。

お仕事

現在はハミガキペーストの商品開発に携わっています。ハミガキペーストは私達の生活必需品であり、近年では口腔疾患予防への意識の高まりを反映した様々な機能性を謳う商品や使い心地など情緒的価値を高めた商品が増えてきました。
「お客様が求める機能性とは?」「それに適した使用感とは?」を毎日試行錯誤しながら、顧客の声を聴いて処方設計に反映しています。

仕事に役立っている工業化学科での学び

ハミガキペーストの開発にはレオロジーや界面化学、無機化学に関する知識が必要不可欠であり、まさに工業化学科で学んだ知識が礎になっています。
加えて、大学院で学んだ生化学や微生物学に関する知識も別の場面で役立っています。歯周病の悪化には細菌が大きく関わっており、お口の健康に関わるサンスターで研究をしている以上、先行する自社技術を理解した上で自分らしい新しい提案をしていく使命があります。そのためにも生化学や微生物学の知識は、今後の研究に向けて自分の大きな拠り所になると感じています。
幅広い化学を学ぶことのできる工業化学科を卒業したからこそ、理想は化学と生物という2つの視点を持つハイブリッドな研究員です。目標に向かって日々楽しく、真摯に取り組んでいます。

後輩へのメッセージ

卒業して改めて実感していますが、工業化学科は本当に偉大な先生方から多くを学べる、素晴らしい空間です。学んだことは必ずいつか役立つので、悔いを残さないよう好きなことを深く学んでください。
また、大学時代の友は一生の宝です。卒業してからも影響や刺激を与え続けてくれる存在だと思います。友を大切にしつつ、やりたいことに全力で取り組んでください。

職場の同僚と一緒に須磨アルプス登山。「神戸市には六甲山系の山々が連なり、休日登山を楽しんでいます!」
職場の同僚と一緒に須磨アルプス登山。「神戸市には六甲山系の山々が連なり、休日登山を楽しんでいます!」

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