稲本 純一(いなもと じゅんいち)さん/京都府出身

京都大学工学部工業化学科(2011年度卒業)
京都大学大学院工学研究科 博士後期課程(2016年度修了)
在学時の所属研究室:物質エネルギー化学専攻 工業電気化学分野 安部研究室
現在:兵庫県立大学 大学院工学研究科 応用化学専攻 助教

難題から逃げ出さず
立ち向かう自分になれた

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 どうして京大工業化学科へ?所属研究室選びの決め手は?

私は京都で生まれ育ったということもあり、子供の頃から京都大学は身近で憧れの存在でした。高校時代は化学が一番好きな科目でしたが、高校の授業では「なぜその反応が起こるのか」などの理論的背景が不明確なことが多く、もっと深く知りたい、そしてせっかく化学を学ぶなら憧れの京都大学で、と考えて京大工業化学科を志望しました。

所属研究室選びの決め手は?

多くの研究室を見学しましたが、その中でも特に学生が主体的に研究を進めている印象を受けた研究室を選びました。

学部、大学院での研究

リチウムイオン電池の正極(プラス極)に使われる材料の長寿命化を大きな目標として、その劣化メカニズムを詳細に調べるという研究を行っていました。
リチウムイオン電池は多数のメーカーも研究開発を行っており、製品の特性向上などを目指したものが多いですが、大学ではすぐには実用化が難しくても、より基礎的で中長期的に重要な研究を行うことができるのが魅力だと思います。私のテーマも大学ならではといったものであり、基礎研究の難しさや楽しさを感じることができました。

京大工業化学科の魅力

研究分野の多彩さだと思います。化学に関するものなら全て網羅しているのでは、というほど非常に幅広い分野の研究室があるため、学んでいく中で興味を持った分野にマッチする研究室が必ずあると思います。
私も3回生の終わりまで進む分野をなかなか絞りきれませんでしたが、工業化学科は研究室配属の際に様々な分野の研究室から選ぶことができたため、自分の納得がいく分野選択ができました。

京大工業化学科の思い出は?

今振り返ると、定期試験前に友人と一緒に勉強したことがいい思い出です。京都大学は自習スペースが充実しており、友人と議論しながら勉強するような環境も用意されていました。また周りの友人のレベルも高かったので、難しいところはお互い教え合いながら問題を解くことで、より理解を深めることができました。
試験勉強をしていた当時は決して楽しくはなかったですが、今思い返すと得難い環境で勉強できた貴重な経験だったと思います。

就職の決め手

博士課程に進学した当初はどちらかというと民間企業への就職を考えていましたが、研究を続けていくにつれて研究テーマの自由度が高いアカデミアでの就職に興味を持つようになり、所属研究室の先生から紹介していただいた兵庫県立大学の助教の公募に応募しました。
ここでの研究内容は新しい炭素材料を合成してエネルギー貯蔵デバイスに応用するというもので、学生時代の研究内容と近く、これまで京都大学で学んだ知識や経験を活かすことができるという点に惹かれました。
その一方で、これまで経験していない材料合成にも新しくチャレンジできるため、自分の研究の幅を広げる意味でも大変魅力を感じました。

お仕事

現在は大学の助教として研究と教育を行っています。授業は主に2~3回生の学生実験を担当しており、4回生で研究室に配属されるまでに基本的な実験技術や結果の解釈、考察の仕方を学生が身につけられるようにお手伝いしています。
研究は学生時代に取り組んでいたテーマを発展させながら、現研究室で開発された新しい炭素材料を様々なエネルギー貯蔵デバイスに応用する研究も行っています。

仕事に役立っている工業化学科での学び

私は助教の職にありますので、学生時代に研究室で身につけた経験や知識はもちろん直接的に現在の仕事に役に立っています。例えば研究の進め方や論理立てて物事を説明する力などがそうです。
それ以外のところでも工業化学科での学びが活かされており、例えば難しい問題に直面したときの対処法です。工業化学科の講義内容は決して易しいものではなく、すぐには理解できない高度な内容も多々ありました。
そんな時は自分が納得できるまで文献で調べたり、友人と相談したりしながらじっくり考えていたため、難しい問題からも逃げ出さずに立ち向かう姿勢が身についたと思います。
現在も研究で考察が難しい結果が出てきたり、自分がこれまで知らなかった体系的知識の習得が必要となったりすることがありますが、工業化学科での経験があったからこそしっかりと腰を据えて取り組むことができていると感じています。

後輩へのメッセージ

工業化学科を卒業した大半の人は企業や大学に就職して最先端の化学研究に携わることになると思います。ですが、どんなに最先端の研究でも基本となるのは大学で学ぶ基礎的な化学のコンセプトや考え方であり、ここを避けていきなり先端的な研究をすることは不可能です。
その点、工業化学科は基礎に重きを置いたカリキュラムが組まれており、本人が意欲を持って学べば“一生モノ”の考える力をつけることができます。この素晴らしい環境でぜひ沢山のことを学んで将来の糧にしてください。

リチウムイオン電池用薄膜正極の作製時の様子
リチウムイオン電池用薄膜正極の作製時の様子

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